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2004年11月24日

ITmediaニュース 2004年11月24日 『電車男』 ヒットの背景にあるものは?

『電車男』がベストセラーに躍り出たのは、インターネットが日本の若者の日常生活にいかに深く浸透しているかの表れだと専門家は話している。(ロイター)

トム・ハンクスのような主人公も出てこないし、まだ映画にもなっていない。だが1998年のヒット映画『ユー・ガット・メール』のようなインターネット時代を背景にした古典的なラブストーリーが、日本でベストセラーになっている。その物語には紛れもなく日本ならではの趣向も満載だ。

『電車男』は実話とされ、日本最大のインターネット掲示板でやり取りされた膨大なメッセージが基になっている。事の起こりは、主人公の青年が電車内で暴れる酔っ払いから女性を助けたことだった。

ハイテクとポップカルチャーに夢中になりながらも、実際の人付き合いは苦手という多くの日本のオタクの1人である主人公は、その女性にあこがれ、デートの誘い方のアドバイスを求めて匿名で投稿を書き込んだ。

それから5月までの3カ月間に物語が展開。「電車男」は掲示板に集まる同じく匿名の仲間たちに励まされ、勇気を奮って「エルメスさん」に電話をかけ、デートをし、愛を告白した。彼女の名前は、電車で助けてもらった感謝のしるしに彼に贈ったティーカップのブランド名から来ている。

『電車男』はその間のインターネット掲示板でのやり取りをまとめた形で10月に発売され、ベストセラーに躍り出た。専門家は、これはインターネットが日本の若者の日常生活にいかに深く浸透しているかの表れだと話している。

「私の学生の多くはたくさんの時間をインターネットに費やしている。ある意味で、彼らはそうして現実とつながっている」と上智大学比較文化学部のジョン・クラマー教授は語る。

「またある意味で、この本は彼らがやっていることに市民権を与えるものだ。彼らは、自分は変わり者ではなく、インターネット漬けのオタクのような人種ではないと考えることができる」とクラマー氏は付け加える。

オタク文化

この本はスラングと顔文字だらけの投稿を364ページにわたって延々と羅列した形式になっており、散文が連なる文学に慣れた読者は頭が痛くなるかもしれない。

だがそうしたスタイルは、1日の中で携帯電話やコンピュータで短いテキストメッセージのやり取りをする時間がますます増えている日本の多くの若者にとってはおなじみだ。

日本のインターネット普及率はまだ米国には及ばないものの急速に拡大しており、1997年には10%未満だったのが、2003年には人口の60%を突破するに至っている。

「電車男」自身はまさに典型的な「オタク」だ。オタクと呼ばれる日本の若者たちは、コミックやコンピュータゲーム、ハイテク小物などさまざまなジャンルのポップカルチャーにのめり込んでいるマニアだ。

これらのポップカルチャーの熱狂的ファンは大きく拡大し、マーケティング専門家のターゲットとなっている。先に証券会社系の研究所が、彼らが趣味に年間約2900億円を費やすとの推計を示し、そうした傾向が浮き彫りになった(8月24日の記事参照)。

その半面、このサブカルチャーを愛する人々は、付き合い下手と相場が決まっている。

「『電車男』は女性と一度も付き合ったことがないオタクなので、掲示板にアドバイスを求める」と新潮社の担当編集者、郡司裕子氏は語る。

「彼にアドバイスする人たちも女性に慣れていない。だから時々まったく的外れな助言をする」と同氏は付け加える。

恋に不器用な青年というテーマは、多くの人にアピールしそうだ。

「独身の友人に、お前もまだ結婚してないから読むべきだと言われた」と東京の店頭ワゴンで同書を購入したイナゲ・マナブ氏(31)は語る。

匿名の魅力

イナゲ氏のような青年は友人にアドバイスを頼むのは照れくさいかもしれないが、「電車男」と助言者たちは気軽に話し合える。インターネット掲示板の完全な匿名性のおかげだ。これは人前で感情を表に出したがらない多くの日本人がインターネットに魅力を感じている点だ。

「インターネットは非常に物を言いやすい場だ」と上智大学のクラマー氏は語る。

「身元を隠して話をしたい場合、インターネットはうってつけだと思う。普通の人付き合いは社会的な枠組みに強く制約されるが、インターネットではそれにとらわれずに済み、気兼ねなく話ができる」(同氏)

しかし批判派は、まさにそうした匿名性こそがインターネットを危険なものにしていると懸念する。

『電車男』が生まれたインターネット掲示板「2ちゃんねる」は、犯罪を実行するという書き込みの投稿者が実際に凶悪事件を起こしたことで激しい非難を浴びた。3年前に関西で8歳の小学生が刺殺された事件もその1つだ。

インターネットで知り合った人々による集団自殺が最近相次いでいることも背景に、批判派は懸念を深めている。

こうした点をめぐる議論とは別に、『電車男』は本当に実話のラブストーリーなのか、あるいはただの架空の物語で、メディアが派手にあおったために、日本で無数に起こり、たいていは短命に終わるブームの1つになっただけではないのか、という疑問の声がWebなどいたるところで聞かれる。

だが、新潮社の郡司氏はそうした疑問を否定している。

「『電車男』と何度か会い、メールもやり取りした」と同氏。「彼は『エルメスさん』とうまくいっている。彼らはデートをしているし、彼女は本を買った。彼らはハッピーだ」

2004年11月24日 00:00

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