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| 読売新聞夕刊 2004年12月15日 大きいネットの宣伝力 »
2004年12月14日
FLASH 2004年12月28日号 電車男を現実社会に引き入れた美人編集者
「2ちゃんねる」 から生まれたベストセラー、その中身は意外なほど共感できるし、温かい。その世界と世間との懸け橋を作った女性が、スバリ当たったその仕掛けについて語る。
賛否両論入り乱れる“電車男”の正体とは?
発売からわずか2カ月で46万5千部を突破。大ベストセラーにして、賛否両論渦巻く “問題作” だ。そもそもこの本には特定の著者がいない。いちおう、「中野独人」という著者名が表示されているが、本の最後にはこんな断わり書きがある。
『*中野独人とは、「インターネットの掲示板に集う独身の人たち」 という意味の架空の名前です。』
要するにネットの巨大掲示板 「2ちゃんねる」 内の書き込みを本にしたのが 『電車男』 の正体であり、つまり不特定多数の総体が 「著者」 なのだ。
このサイトを見て 「これは面白い。この話を2ちゃんねるの住人たちだけに独占させておくのはもったいない」 と書籍化を目論んだ編集者がいた。この本の仕掛人、新潮社出版部文芸第二編集部の郡司裕子さんである。
「仕掛人だなんていわれるとすごく恥ずかしいんですが(笑)。だいたいネットでこの話を見つけてきたのはうちの編集長ですし、本来黒子に徹するべき編集者がこんなふうに写真入りで雑誌に登場すること自体、あまりいいことではないと思うんですよ。でも、売るためなら仕方ないかなって(笑)」
特定の著者がいないため著者を出してのパブリシティは当然できない。サイン会もできない。著者インタビューもできない。なのに売れている。その理由は何か?
「狙って作ったベストセラーでは全然ないんです。口コミで広まっていき、いつの間にやらヒットしていたという感じですね。ただ内容的には自信があったので、ある程度は売れるんじゃないかっていう予感はありました。私、けっこうそういう点では傲慢なところがありまして、『私が面白いと思ったんだからきっと売れるはずだ』 と(笑)。でもまさかこんなに売れるとは…せいぜい2万〜3万部が現実的なラインで、間違って5万部も売れたらそれこそ盆踊りして喜ぶだろうなって思っていたんですが(笑)」
自分が面白いと思ったのだから売れるはず――最近は出版界においてもマーケティング的発想が主流となってきているが、郡司さんという人は、自分の勘や感性を重視する “古い” タイプの編集者らしい。だからこそ、まったく新しいタイプの書籍を生み出すことができたのだろう。
掲示板の書き込みをそのまま書籍化する。これだけ聞くと 「誰でもできるじゃん」 とか 「パクリかよ」 「ずいぶんお手軽だな」 などと思う人もいるかもしれない。しかし、それは違う。特定の著者がいないだけに出版の許可、著作権、印税の問題等、数々の難問が立ち塞がった。
「最終的に2ちゃんねる主宰者ひろゆきさん、掲示板の書き込みをわかりやすく整理した “まとめサイト” の代表者の方、主人公である電車男さんの了解を得て出版に至りました。その他不特定多数の方々に対しては、“ご協力ありがとうございます” という形ですね。印税ですか? しかるべき方々にしかるべき配分でお支払することになってますよ。新潮社丸もうけ? だったら嬉しいんですけど(笑)」
出版化交渉の過程で相談した3者から出された希望は 「本にするなら2ちゃんと同じ体裁で」 というもの。これはつまり、独自の “2ちゃん用語” やアスキーアートと呼ばれる文字や記号で構成された絵、あるいは半角文字などをそのまま再現してほしいという要望である。
「これらがいちばん大変でした。半角文字などは印刷の世界では本来存在しないものということになっているらしいんですよ。恥ずかしい話ですが、私、そういうことに関してまったく無知だったものですから、逆に怖いもの知らずでやってしまえたという部分はありますね。おかげで印刷所の人にはずいぶん、面倒をおかけしてしまいました」
ところで、『電車男』 インチキ説というものがある。2ちゃんの住人たちの単なるネタ(2ちゃん用語で「作り話」の意)ではないかというもの。
「ごく少数の人間による妄想だろうという話ですよね。それに対する反論になるかどうかはわかりませんが、私は実際に主人公である電車男さんにお会いして、お話しもしているんです。一見、こざっぱりとした新入社員風の若者なんですが、『ケロロ軍曹』 の話を熱く語りだしたときはやっぱりオタクなんだなあと感じ入りました(笑)。じつは私もかつて引きこもり気味だった時期がありまして、電車男さんや、掲示板に書き込みをする人たちの気持ちってなんとなくわかるんですよね。そんな私の勘からいえば、『電車男』 の話は間違いなく事実だと思いますよ(笑)」
主人公の電車男が実在の人物だとしても、彼がネット上で語った恋愛ストーリーが事実であると証明することにはならない。電車男さんの妄想の可能性だってある。しかし、そうした虚実ない交ぜの世界こそがネット世界における「実体」なのだ。
『電車男』 の真偽を現実世界の視点から詮索した時点で 「負け」 であり、それこそ郡司さんの思う壺なのかもしれない。
2004年12月14日 00:00
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