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2005年03月09日
mr partner 2005年4月号 『電車男』担当編集者に聞く
「2ちゃんねる純愛」が本になるまで
8,000部スタートの予定が
とにかく、異例づくしの本である。
全編横書き。つまり洋書のように、通常の縦書きの書籍とは逆側から開く。そして、その内容はあの巨大掲示板“2ちゃんねる”のログがほぼそのまま掲載されているのだ。「キボンヌ」であったり「厨房」であったり「DQN」であったり、半角カタカナ文字や、誤変換が定着した独特の用語もそのままだ。もちろん、AA(アスキーアート)もそのまま。
そんな本がいま、売れに売れているのだ。
「正直なところ、ここまで売れるとは思ってもいませんでした。初版は8,000部からのスタートだったのですが、予約が殺到し、発売日前に増刷が決定して、結局、発売時で、もう3刷5万部に達していました。そして、発売2ヵ月で50万部を超えました」
この大ベストセラー本『電車男』の担当編集者である、新潮社の郡司裕子さんの偽らざる感想である。
『電車男』とは
そもそも『電車男』とはなんなのか。それは“2ちゃんねる”のひとつのカテゴリーである「毒男板」(=独身男性板の意)に書き込みをした男のハンドルネームだ。
そこでは「匿名さん」たちの、なかなか女性とうまくいかない悩みが書き込まれ、ああでもないこうでもないとマターリ(まったりと)やりとりがされている。
そんなとき、「電車で絡まれている女性を助けたところ、お礼のマグカップが送られてきて、さあどうしよう」というような内容が書き込まれる。彼はアニメ好き同人好きの、いわゆるアキバ系オタクで、彼女いない歴=年齢=22歳。しかも、相手の女性はかなりかわいく、とても釣り合わない。でも、なんとかしたい。
自らを「電車男」と名乗る男の悩みに、掲示板の住人たちは同類の匂いを感じ、敏感に反応した。「お礼の電話をかけろ」「いや、手紙のほうがいい」「それで食事に誘え」とアドバイスを開始する。ちなみに、マグカップのブランドが「エルメス」だったため、相手の女性は「エルメスさん」と命名された。
最初は面白半分の反応だった。ところが「電車男」は驚くほどの実直さで、そのアドバイスを実行していく。掲示板には逐一経過が書き込まれる。なんと、初デートオーケーの返事。喜びながらもお洒落な店など行ったことない「電車男」。住人たちは知りうる限りの情報を提供する。お洒落な食事どころの紹介、髪型やファッションの提案。「電車男」はこれも実直に行動に移す。アキバファッションを捨て、美容院にも行き、変わろうとする。住民たちも既にマジだ。必死で応援し始める。初デート、2度目のデート、彼女の家にお呼ばれ……その都度「電車男」は状況を書き込み、掲示板住民たちもアドバイスを書き込み続ける。モテない君が一人の男として成長するさまが、リアルタイムで繰り広げられたのだ。
「電車男」が恋に落ちてそれが実るまでの2004年3〜5月の2ヵ月のやりとりを1冊の本にまとめたのが『電車男』である。
ネット掲示板をそのまま本にしたかった
「きっかけは上司から、これ面白そうだけど、と『まとめサイト』のURLをもらったことなんです。それまで『電車男』の存在は知りませんでした。でも一読して、すごく面白くって、ぜひこれを本にしたいと思ったんですよ。売れるかどうかはわからない。けれど自分が本当に面白いと思ったものなので、ぜひ挑戦してみたかった」
郡司さんはすぐに“2ちゃんねる”の管理人であるひろゆき氏、「まとめサイト」作成者である「中の人」さん、そして、当の「電車男氏」と打ち合わせの場を持った。
「どういう形で本にするか。ノベライズ(小説化)してしまうと誰かの視点が入ってしまう。でも、掲示板はいろんな人がいろんな立場から発言しているから面白いわけで、それを崩したくない。また、パソコンのモニターの中のクローズドな雰囲気をなるべくそのまま出したかった。だから、横書きで、ネット掲示板そのままを忠実に載せるかたちで作りたいと提案しました」
「電車男」には他社も目を付けていて、実は8社競合だったという。だが、他社の場合、多少内容を“いじる”方向性での提案だったようだ。結局「そのままやりたい」という郡司さんの提案が奏効することとなった。
ちなみに、実物の「電車男さん」はどんな男の子だったのだろう?
「口数は多くないですが、好きなこと……たとえば、アニメの話とかだとワーッと話す、そのへんはちょっと(オタクの)片鱗が伺えなくもないけど、まったくフツーの男の子ですよ。色が白くてカワイイ感じ。それにすごく誠実というか、こちらが少しでも質問したことはちゃんと覚えていて、きちんと調べて回答してくれる、そんな男の子です」
小説だったら怒られちゃう
なぜ、売れたのだと思うかと聞いてみた。
「なぜでしょう。ストーリーとしてはどこにでもあるボーイ・ミーツ・ガールもの。これを小説にそのまま書いたら、ありきたりすぎて怒られちゃうでしょう。ネット上では架空の話だという意見も出ているようですが、私はとてもウソだとは思えません。ドキュメンタリーという部分に面白さがある。それに、発売当初はネットユーザー層の購入者が多かったんです。当然、男性のほうが割合としても圧倒的に高かった。けれど、テレビ番組や新聞、雑誌などで紹介されるうちに、女性読者も増えてきて、いまでは半々になっています。男の子って、実は恋にこんなに一生懸命にがんばっていたんだということを女性たちに教えてくれたのではないでしょうか」
本当になぜ売れたのだろう。
著者は、この本を読み始めた当初、横書きと独特の用語に引っかかって少々苦痛を感じた。だがいつの間にか、本当にいつの間にか、その世界に引き込まれていて、一気にラストまでページをめくってしまった。
ひとつには「電車男」という男性のキャラクターの純粋さがある。“2ちゃんねる”的にも一般的にも得難いレベルのピュアさに、悪名高き“2ちゃんねらー”たちも浄化されたのか、ただ無心に応援のコメントを書き込むのだ。
ボーイ・ミーツ・ガールと友情の2つの柱が、たしかにそこにはあって、陳腐な話だろうがなんだろうが、それが現実であるということが、何ものにも勝る価値である。そこに癒しを感じ、救われる。未読の方は、ぜひぜひ読んでほしい。
クライマックスで一気にバクハツするアスキーアートの連打は、必読(見?)だ。きっといままでどんな文学作品でも大作映画でも感じたことのない、圧倒的なカタルシスをもたらしてくれるだろう。本気でオススメである。
『電車男』出版後、郡司さんが「2ちゃんねる」を覗くことは、以前にも増してなくなったそうだ。「無能編集者だと散々カキコがあるみたいで、怖くって見れないですよ」。ベストセラー編集者も2ちゃんは怖い!?
「電車男さん」本人が新潮社を訪れ、受付で名前を名乗った際なんといったか―――「あの、“デンシャ”と申しますが」。「適当な偽名を言えばいいのに、そんなふうに言っちゃうところが、なんとも独特な、彼の魅力なんですよね」(郡司さん)
続編は考えているかという問いには「今回はあくまで前例がない試みだからこそ、やってみたかったわけで」と言葉を濁す。「でも出版界は、5匹目のドジョウぐらいまではいると言われている世界なので、他社から似た体裁の本が出るとは聞いています。今後もネット掲示板から面白いものが出てくる可能性はおおいにあるのでは」
2005年03月09日 19:52
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